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まちづくりコラム:働きたい場所をつくる──福祉施設の採用を変える“ブランドデザイン”の力「サニー!!デイサービスMeihansou」

今回のまちづくりコラムのテーマは、福祉施設の「採用ブランディング」について。

人材不足が深刻な福祉業界。
その課題に対し、「採用ブランディング」という視点から新たな一歩を踏み出したのが、社会福祉法人 貞徳会が運営するデイサービス施設「サニー!!デイサービスMeihansou」。
スタッフのモチベーション向上と人材獲得、高齢者福祉サービス利用の抵抗をなくすことを目的としたプロジェクトです。

エイトデザインは新築の建物の内装部分のデザインと施工、ロゴなどのブランディングデザインを担当しました。

本記事では、新規事業立ち上げ時に「ブランドづくり」に投資したオーナーの判断と、その結果生まれた変化について、社会福祉法人貞徳会の加藤さん(以下敬称略)にお話しを伺いました。

目次

採用と利用、その両方の“入り口”に立つデイサービス

エイトデザイン: 今回のプロジェクトの経緯を教えてください。

加藤:高齢化が進む地域では、要介護高齢者の生活を支える「居場所づくり」の重要性が、これまで以上に高まっています。
近年は高齢者の価値観やライフスタイルの多様化に伴い、「従来型のデイサービスには通いたくない」といった声を耳にする機会が増えました。
また、ご家族の間でも「昔ながらのデイサービスに通わせることに抵抗を感じる」という意識の変化が見られます。
このような時代の流れを受けて従来のデイサービス像とは異なる、新たな価値を備えた居場所づくりが求められていると感じました。

そこで私たちが目指したのは、「通う」場所ではなく「通いたい」と思える場所です。
利用者の暮らしがより豊かになるよう、居心地の良さやプライベートな時間を大切にできる環境づくりを心がけています。
また、そこで働く職員も明るい気持ちで働ける場所であることも大切なコンセプトとしています。

エイトデザインさんは、デザイン力の高さに加え、コンセプトの提案力に深く共感したこともあり、当法人が思い描く新しいデイサービスを共につくり上げられると確信しました。

この想いを形にするために、63年の歴史を持つ法人が培ってきた特別養護老人ホーム明範荘の運営ノウハウを活かしつつ、新たな発想によるデイサービスの提供を目指して「サニー!!デイサービスMeihansou」を作り上げました。


 
 

“働く人の誇り”をデザインでつくる

エイトデザイン:今回のプロジェクトで特に印象に残っていることは何でしょうか?

加藤:エイトデザインの皆様には、これまでの実績と豊富な経験を土台に、柔軟な対応力と利用者目線に立った提案力を発揮していただき、大きな信頼感をもってプロジェクトを進めることができました。
印象的だったのは、当法人の理念やゾーニング計画を丁寧に読み解き、それを空間設計に的確に反映していただいた点です。
こちらの想いをくみ取りながらも、プロの視点で新たな価値を加えてくださる提案の数々には、大きな安心感と頼もしさを感じました。
最終的には、施設コンセプトと一体化したロゴデザインのご提案までご対応いただき、空間とビジュアルの両面からブランドとしての一貫性を確立することができました。



エイトデザイン:サニー!!デイサービスという、利用者の子供世代にとって馴染みがあり、一度聞いたら忘れられない親しみやすくユニークなネーミング。
ロゴは一目で覚えてもらいやすく、語呂合わせから「 321 」を「 サニー 」と読ませる遊び心のあるシンボルマークをデザインしました。
このシンボルマークはユニフォームだけでなく、グラスやコースターなど施設内の様々な小物にも展開。
施設全体の雰囲気のクオリティアップはもちろん、働くスタッフたちの一体感の醸成にも役立っています。

 


 
 

採用力こそ、施設の価値を左右する

エイトデザイン:採用活動では、具体的にどのような変化や効果を感じていらっしゃいますか?

加藤:施設を”ただの施設”ではなく、”ここで働きたい場所”にするというビジョンでブランディングをした結果、コンセプトや空間デザインが強みとなり、採用活動においても明確な効果が表れています。
求職者の施設見学の際には、ホールの開放感や、スタッフ専用の休憩スペースに注目される方も多く、“働く環境”を大切にしている姿勢がしっかりと伝わっていると感じます。
さらに、採用後の定着率も良好で、求人応募の動機づけだけでなく、職員の働きやすさや定着にも良い影響を与えていると実感しています。

 
 

誰もが心地よく過ごせる空間を

エイトデザイン:ご利用者様からはどのような反応やご感想をいただいていますか?

エイトデザイン代表取締役 上坪:当時このプロジェクトのお話をいただいた頃、自分の祖母がデイサービスに通い始めるタイミングでした。「デイサービスには行きたくない」と言う祖母の姿を間近で見て、コンセプトの方針を検討するきっかけとなりました。
高齢者の皆さんが楽しく交流できる社交場であるべきだ、という課題感から、喫茶店のコンセプトが生まれました。

加藤:利用者の皆様からは、「落ち着いて過ごせる場所だ」と日々うれしいお声をいただいています。
従来のデイサービスにありがちな堅苦しさがなく、自分のペースでゆったりと過ごせる点が好評で、「サニー!!デイサービスMeihansou」に通うのを楽しみにしてくださっている様子が、日々のやり取りから伝わっています。
なかでも特に好評なのが、本を読みながらくつろげる、純喫茶をイメージしたブックカフェスペースです。
落ち着いた照明と良書に囲まれた上質な空間で、コーヒーを片手に静かな時間を楽しまれています。
特に男性からは、「こういう雰囲気の場所なら通ってもいい」といった声も多く、世代や性別を問わず心地よく過ごせる空間として親しまれています。
地域の方が喫茶店と間違えて入館されることもあり、そのたびに職員が丁寧に「こちらはデイサービスです」とお伝えしています。
そのやり取りを見ていた利用者様が、ちょっとした優越感を感じてにこやかに微笑まれることもあり、ご自分たちが過ごしている場所の雰囲気や質の高さを実感していただけているようです。


 
 

最後に──

加藤さんありがとうございました。
改めて現場の想いに触れることで、当初掲げたビジョンが確かなものであったと強く実感いたしました。
このプロジェクトに携わることができたご縁に感謝しています。
これからも地域のまちづくりに貢献しながら、一人ひとりが心から「楽しむ!」と感じられる場を大切に育んでいきます。