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まちづくりコラム:商業施設に砂丘を作りたい!? TOYLO PARK第3弾、イトーヨーカドーららぽーと横浜店の挑戦

TOYLO PARKとはイトーヨーカドーの子供関連売り場のリブランディングプロジェクト。
デジタル技術を駆使した次世代テーマパーク「リトルプラネット」と融合したコンセプトフロアです。

エイトデザインは企画・ブランディング・設計施工で参加。
2021年4月にオープンしたイトーヨーカドー大和鶴間店を皮切りに、2021年11月にはグランツリー武蔵小杉、2023年4月には第3弾がイトーヨーカドーららぽーと横浜店にオープンしました。

3店舗目の目玉は巨大な砂場。多くのメディアに取り上げられ、話題になっています。


どうして砂場を商業施設に作ることになったのでしょうか?
その背景や現場の声を、担当した株式会社イトーヨーカ堂子供ワールド部山幡さんと、ららぽーと横浜店の店長小宮さんのインタビューも交えてご紹介します。

マーケット調査で見えてきた港北エリアからの集客強化の必要性

イトーヨーカドーららぽーと横浜店のリニューアルにあたり、詳細なマーケット調査を行いました。

ららぽーと横浜のモールとイトーヨーカドーそれぞれの来店者の属性を調査し、双方共に港北エリアからの集客が弱いことが浮き彫りに。

ターゲットとなる子どものいるファミリー層の集客を強化するため、課題を整理しリニューアル方針を検討しました。


集客コンテンツを強化するために

新しい情報・体験を求めるターゲットを呼び込むために、リニューアルのテーマを「時間消費型のアミューズメントパーク」、来店動機を「買い物」から「遊び」に変えることを目標としました。

TOYLO PARKは2021年の第1弾から公園を超える楽しさを提供する場を目指していましたが、今回のプロジェクトではより本物の公園に近づけるため、公園の三種の神器(砂場・滑り台・ブランコ)のうちの2つ、砂場と滑り台を作ろう!というアイデアがイトーヨーカ堂の山幡さんから持ち上がりました。

公園の三種の神器、砂場をつくりたい!

山幡さんの要望は、「TOYLO PARKを最強の公園にするために、砂場、いや砂丘をつくりたい!子供の頃に鳥取で体験した砂丘の驚きを商業施設でも絶対に再現したい」というものでした。

最初に聞いた時は、作り方の想像が全くできず、荒唐無稽なものにも思えました。ただ、作る事で得られる話題性や、現状の店舗が獲得できていない顧客層の獲得を目指した試みである事、このプロジェクトにかける山幡さんの思いを受けて、砂山を作り出すことにエイトデザインとして全力で応えることにしました。

商業施設で砂丘を実現するために苦労したこと

砂山をつくるにあたって、はじめにぶつかったのは重さの制限でした。建物の中に作る以上、フロアの荷重制限をクリアする必要がありました。

そのため砂を山状に積み上げる完全な砂山にするのではなく、滑り台に砂を留める施工方法にしました。富山の協力会社の工場まで担当者のみなさんと一緒に出向き、滑り台の角度や、砂の固定の検証をしています。

また、遊んだ後の衣服についた砂を払い落として売り場に戻ってもらうこともかなり重要な課題となりました。
エアーを使用した砂払いブースを設けることで、その課題をクリアしています。

砂山をもっと楽しんでもらうために

小さな子どもだけでなく、小学生の中高学年の子どもたちにも楽しんでもらえるように、砂山の斜面は2パターン作りました。

斜面にはリトルプラネットによるプロジェクションマッピングの演出が加わり、ただ滑るだけではない楽しさを提供しています。

滑り台が難しい幼児には、専用の砂場で遊んでもらえるようにしています。

リニューアルの効果は──

イトーヨーカ堂子供ワールド部山幡さん(以下IY山幡さん)
“売上は昨年に対して2倍以上に増加しました。幼児層からZ世代まで客層の幅も広がっています。砂山の登場で想像以上に話題になり、メディアに多く取り上げられたのも嬉しいです”

テレ朝NEWS「イトーヨーカ堂 ファミリー層取り込み狙い遊び場を充実」
流通ニュース「ヨーカドー/ららぽーと横浜店フード&ドラッグ強化、30~40代取り込む」
食品新聞「自社運営のアパレル事業を撤退するイトーヨーカ堂 利益成長策の1つが「砂場」 最大の競合は公園」

ららぽーと横浜店店長小宮さん(以下店長小宮さん)
“リニューアルの後、2階フロア、1階フロアの客数は増加(店舗全体で1割近い伸び)で、TOYLO PARKは施設全体の集客のトリガーになっているのは間違いないと思います”
“売上も子供ワールド自体の売上は好調に推移しています。食品の売上もデリカ関連中心に伸長。2階のお客様が食品まで波及して、週末は客層が更に若くなりファミリー向け、子供向けのカテゴリーが大きく伸長しています”

エイトデザインと売場創りを進めてみて──

IY山幡さん
“TOYLO PARKは今回で3店舗目になりますが、単なる踏襲でなく毎回進化しています。今回なら新たに「砂山」を目玉にしましたが、新しい挑戦は上手く簡単に進むわけではないので苦労しました。でも子供がららぽーと横浜に行きたい!!と言うにはどうすればよいかをとことん追求したし、妥協しなかったので、満足できる出来になりました”

店長小宮さん
“率直に言って、非常に良かったと思います。毎週の工程会議にての細かな意見交換や打ち合わせも今更ながら大変意義のある項目と痛感しています。皆、こだわりや個性が強いメンバーで、全体的には非常に良いものが出来たと思います”

今後取り組みたいこと──

IY山幡さん
“TOYLO PARKの多店舗展開(計10店舗) 。できれば外部出店も視野にいれたいですね。「遊び」のテーマパークとして、子供たちが本当に楽しめる行きたくなる場を創出していきたいと思っています”

店長小宮さん
“砂山を活用したイベントの開催や販促コラボ、プロジェクトマッピングの内容変更等、コンテンツの進化をさせていきたいです。集客イベントやシーズンイベント、スクール用品売り場ももっと強化したいし、お客様からの見え方や客導線を意識した什器配列、空間演出、パブリックなどの使い方等はもっともっと進化させていきたいです”

TOYLO PARKのプロジェクトでは毎回新しいことに挑戦していますが、今回もまた今までにない内容・スケールの試みでした。

完成した売り場で子どもたちやファミリーが楽しそうに過ごしている光景を見て、大変だったけど妥協しなくてよかったなと苦労が報われた気持ちになりました。

みなさまも横浜にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

事例を見る:TOYLO PARK イトーヨーカドーららぽーと横浜店